エッセイ

Jade

Jadeに会いたいと思った。

Jadeというのは、6年くらい前にアイルランドで会った女の子。

某社の戦略的新型デジカメの小冊子を作ることになり、その取材で、なぜか、
アイルランドの北西部まで行くことになった。なぜか。

当時、ロンドンに住んでいた、編集長の知り合いの女性にコーディネートをお願いし、
ダブリンのモデル事務所に何人かの女の子の写真を、送ってもらった。写真を見てる段階から、
この子がいいね、ってみんないってて、ロケ隊がダブリンに着いた夜に行われたオーディションでも、
やっぱりJadeがいいっていうことで、次の日からの撮影ロケに、お母さんと一緒にJadeは来た。

あれはたしか、ロケが始まって二日目の夜だったと思う。その日の撮影が終わって、
ホテルに戻ってきて、ああ疲れたぁ〜、今日もギネスがうまいに違いない、と思って
ロビーを歩いてると、Jadeがすごい勢いでやってきて、いきなり僕に抱きついてきた。

一瞬、何が起こったのか、わからなかった。

僕はそのころ、まだ女の子をなぐさめるすべを、知らなかったわけで。
(いまも知らないけど)

あとで話を聞いたら、その日の撮影で、写真家の方の指示通りに動けなかったのが、
すごくつらかったみたい。それが一日のロケが終わって、爆発しちゃったんだね。
しょうがないよ、だってJadeはまだ10歳とかなんだから。

4日間ほどの撮影ロケが終わりに近づいた日、ロケバスのなかで、助手の方と、僕と、
Jadeの三人で、ずっと英語でおしゃべりしてた。通じてるか通じてないか、わかんないような、
そんなつたない“会話”だったけど。でも、なんだかわかんないけども、すごく楽しかった。

僕は勤めてた会社を2年ほど前に辞めたんだけど、いくつか後悔してることがあって、
そのひとつが、Jadeのお母さんの連絡先(メールアドレス)を記したノートを、
退社の際のバタバタで、捨てちゃったこと。
そのあとで、どれだけ後悔したことか。


何日か前に、Jadeが夢に出てきたのね。
具体的なシーンとかは、覚えてないんだけど。
黙ってこっちを見つめてた気がする。

それで、起きたとき、じゃなかったかな、起きてしばらくしてから、ああ、そういえば今日、
Jadeが夢に出てきたなぁ、と思い出したときかな、そのとき、Jadeに会いたい、と強く思った。
Jadeに会いたい。Jadeも僕に会いたがってるんじゃないだろうか。もしかしたら、だれかに
いじめられてるんじゃなかろうか。


明日、じつは、5年ぶりに、ロケでコーディネーターを務めてくださった方に、会う。
Jadeに会いたい!っていうことは、彼女には実はメールで過去に何度か伝えてる。
連絡先、わかんないですか?って。でも、そのたびに、ごめんなさい、わかりません!
っていう同じ返事がかえってきて。

まあそうだよな。それじゃあしかたないよな。けど、そうだ、仕事として、
アイルランドのダブリンのモデル事務所に、仕事として依頼すれば、いいんじゃないのかな。
そうだ、そうだ。そうだ。

そのことを明日、話そうと思ってる。
コーディネート料、高くつきそうだけど。


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